映画『イカとクジラ』
(監督・脚本:ノア・ボーンバッハ 製作:ウェス・アンダーソン)
★★★
『ライフ・アクアティック』の脚本家として名を上げたノア・ボーンバッハの監督作。彼がジェニファー・ジェイソン・リーの旦那だから言うわけではないんだが、本作と『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』の関係は、(ジェニファー・ジェイソン・リーの監督作である)『アニバーサリーの夜に』と『マグノリア』の関係に非常によく似ていると思う。本家と比べると極めて個人的で小品然としているが、それ故に愛さずにはいられないというところが。
ただ、傑作ではないよな。81分という中途半端な上映時間が示唆しているように、中篇向きの脚本を無理矢理長編に引き伸ばしたような感があるのだ。というか、これこそ上映時間60分のピンク映画でリメイクすべき素材だろう。濡れ場も規定回数あるのだし。父親のジェフ・ダニエルズには伊藤猛、母親のローラ・リニーには葉月螢という『不倫日記 濡れたままもう一度』のコンビで、ジェフ・ダニエルズに迫る女子大生アンナ・パキンには華沢レモン、テニス・コーチのウィリアム・ボールドウィンには川瀬陽太でよろしく(息子役は誰でも可)。上野俊哉監督でバカ兄弟シリーズのノリで演出すれば面白くなるはずだ。
ウィリアム・ボールドウィンは『プリティ・イン・ニューヨーク』に続いて名演。いやあ、本当に良い役者になった。この調子で行けばスティーヴン・ボールドウィンを超える日も近いかもしれない。