Roddy Woomble/My Secret Is My Silence
★★★★★
アイドルワイルドのヴォーカリストの1stソロ・アルバム。アイドルワイルドはまだ解散したわけではないし、とりあえずバンド作品の七掛け程度に楽しめればいいかな、と思っていたんだが、これはアイドルワイルドの諸作を遥かに超える大傑作だった。
アイドルワイルドのギタリストであるロッド・ジョーンズも過半数の曲に参加しているので、バンド作品に近いギター・ロックな楽曲も幾つかはあるのだが、大半はアコースティック楽器を中心に据えたスコティッシュ・フォークなサウンドが基調となっている。トラッド・ソングのようにシンプルでキャッチーなメロディを持つ歌の数々は、まるでブルース・スプリングスティーンの『We Shall Overcome: The Seeger Sessions』に対するスコットランドからの返答のようでもある。
この作品の美しさを形容する際に、「牧歌的」という表現は相応しくないだろう。祈りにも似た切実さを伴った、物悲しくも力強い響きは、幼い頃から世界各地を転々としてきた根無し草のロディ・ウォンブルが、彼自身の中にある「うた」という概念を徹底的に突き詰めた末に生まれたものであるのは間違いない。「うた」とは、歌うという行為とは、生きる事そのものであり、この世界における絶望への対抗手段なのだ、ということを改めて実感させられたよ。いや、本当に素晴らしい。全11曲41分。ポーグスのファンにも自信を持ってお勧め。必聴。
歌声の中には真実がある/未来へと続く道がある
だから、大きな声で歌い続けるんだ
君も僕も/まだ一人旅の途中だから
(「Play Me Something」)