The Pink Spiders/Teenage Graffiti
★★★★★
4月から推し続けてきたピンク・スパイダーズのメジャー・デビュー・アルバムがようやく発表。期待していた通りの、ロックンロール・リバイバルを踏まえた、00年代パワー・ポップのスタンダードたる作品に仕上がっているので大満足じゃ。『Hot Pink』の唯一にして最大の問題点であった激悪な音質も改善されているしな。
リック・オケイセクをプロデューサーに迎えたことからも、レコード会社がウィーザー路線を狙っているのは明らかなんだが、実際にはウィーザーというよりもカーズに近いサウンドになっているところに、単なる90年代リバイバルでは終わらないピンク・スパイダーズの可能性の大きさ、捻くれ加減を見ることができる。それはリヴァース・クオモから「泣き虫」の要素だけを差し引いたかのようなマット・フリクションのソングライティングによるところも大きいのは言うまでもない。
とか偉そうなことを書いてみたけれど、単純にピンク・スパイダーズの連中って80年代の音楽が大好きでしょうがないんでしょうなあ。でなければ、本作にアディショナル・ミュージシャンとして参加しているデイヴ・デヴィッドソンに“ダイアモンド・デイヴ”なんてニックネームを付けるわけがないじゃないか! というわけで、(先行シングル「Little Razorblade」を筆頭とする)本作での80年代ニューウェイヴ色の強いキーボード・サウンドは、決してリック・オケイセクの主導によるものだけではなくて、バンド側の意向も多分に入っていると考えておくべきだろう。
徹底して貫かれたB級エンターテイメントとしてのロックンロール魂にシビれる全12曲38分。ブックレット内のメンバー写真の背景に貼られた映画『スラップ・ショット』のポスターが全てを象徴しているかのようだ。ストロークスのソングライティング能力に不満を抱いている人(=おいら)も、これならば満足できるはず。