★★★★
ジュリアナ・ハットフィールド率いるサム・ガールズの2ndアルバム。
2003年に発表された前作『Feel It』は可もなく不可もない凡庸なギター・ロック・アルバムだったが、今作ではブレイク・ベイビーズ時代からの盟友であるフリーダ・ラヴの役割が拡大し、まるでスリーター・キニーのようなミニマルなロックンロール(ただしもっとメランコリック)を奏でるようになっていたのであった。反対に、前作では大半の楽曲を手掛けていたジュリアナ・ハットフィールドの役割は縮小され、ソングライティングに関わっているのは全14曲中6曲のみ。
ジュリアナ・ハットフィールドはネット上で未発表曲を大量放出した直後ということもあるのか、本作ではあくまでもバンドの一員として吹っ切れた演奏と歌を聴かせてくれる。ソロとしての前作『Made In China』でヘヴィな方向に振りすぎていたのが気になっていただけに、久しぶりにリラックスした表情を見せてくれるのがとても嬉しい。シンガー・ソングライターとしての側面は次回のソロ・アルバムで存分に見せてくれるだろうから、とりあえずはこれで全然OK。
彼女達が「ジュリアナ・ハットフィールドのサイド・プロジェクト」からパーマネントなバンドとして固まってきたことを印象付ける快作。スカスカのサウンドがギターの存在感を際立たせていて気持ち良い。全14曲49分。
それにしてもジュリアナ・ハットフィールドは凄い。この人はギタリストとしてもシンガー・ソングライターとしても、それこそボニー・レイット並みに評価されてしかるべきだと思うんだが、未だに90年代に発表した初期2枚のソロ・アルバム、『Hey Babe』と『Become What You Are』(どちらも駄作)のオルタナ・クイーン(もしくはプリンセス)的イメージのみで語られてしまうのが非常に勿体無い。この人の本領が発揮されるのは98年の『Bed』以降なのに。00年代に発表した『Beautiful Creature』とか『In Exile Deo』とかとんでもない傑作なのに。今作でも「Live Alone」で彼女が「どれだけの人が孤独に生きていくのだろう?」と歌う時に、諦観が生きる力に転換される瞬間を感じることができる。最終曲「Magnetic Fields」で彼女がギターをチョーキングすると、それが現実を捻じ曲げる力として機能しているのが分かる。そして、そんな音楽を奏でる人こそをロックンローラーと呼ぶのだろう。