★★★
プライマル・スクリームの8thアルバム。世評通り、(「Jailbird」と「Rocks」を除くとあとはタルいバラードばかりだった)『Give Out But Don't Give Up』の雪辱盤といった感じの内容。アコースティック楽器の鳴りが気持ち良いやね。
プライマル・スクリームというバンド(もしくはボビー・ギレスピー)が、その時のモードに合わせて、コスプレ的な感覚で様々なサウンドを取り込んでいく完全な「偽物」であるというのは衆目の一致するところであると思う。いや、偽物であるのは別に構わないのだ。彼等の不幸は、何を着ても全く似合わないが故にひたすら「うた」に向き合わざるを得なかったジーザス&メリー・チェインなんかと違って、何を着てもそこそこ似合ってしまうところにある。だから、彼等はジザメリが『Stoned & Dethroned』でたどり着いたような境地には永遠に到達することができないのだ。そういう意味でも、どんなモードにするか決めかねていた、徹底的に中途半端な『Vanishing Point』こそが、彼等の本質が最もよく表れた最高傑作だと思うんだが。
というわけで、本作はきまりの良さも含めてあまりに90年代的な佳作である。90年代から脱しきれないプチジジイとプチババアにお勧め。というか、これがOKならばブルース・スプリングスティーンの最新作だってOKなはずだよな。あと、全10曲で41分はちょっと長い。だっておいらは全12曲で36分という完璧なロックンロール・アルバム『Convicts』(by ユー・アム・アイ)をすでに聴いてしまっているのだから。