Edgar 'Jones' Jones/Soothing Music For Stray Cats
★★★
唯一のアルバム『Mexican R'n'B』(92年発表)が全曲モノラル録音だったり、来日公演のステージ・ドリンクが牛乳だったりした事でリヴァプール音楽シーンの伝説となったバンド、ステアーズ。そのリーダーであったバカ鬼才、エドガー・ジョーンズがソロ・アーティストとして遂に復活! 今回も全16曲中15曲がモノラル録音だ!(バカ)
60年代のローリング・ストーンズがそのまま90年代に蘇ったかのような『Mexican R'n'B』は、今でもたまに聴き返したくなる文句なしの快作だが、今回はさすがにやりすぎだと思う。『Mexican R'n'B』は黒人音楽から養分をたっぷりと吸収した楽曲を、全て3ピースのロック・バンド形式で無理矢理演奏してしまう事でドクター・フィールグッドのような「熱さ」を感じさせたのに対し、今作では楽器編成がフレキシブルになっているが故に、まるで「黒人音楽フリークの研究成果発表会」のように聴こえてしまう場面もしばしば。要するにバカ度が薄れて趣味の音楽になってしまっているんだな。だから全曲モノラル録音にしておけばよいものを…(←そーゆー問題ではない)。
ステアーズ時代と比較すると、グレン・ミラーやセロニアス・モンクからの引用があったりして、サウンドにはジャズからの影響が色濃く反映されているが、これはジャズ上がりのミュージシャンがバック・バンドを務める事が多かったロックンロール黎明期を彼なりに再現した結果なのだと思う。CDのパッケージにはノエル・ギャラガーの絶賛コメント(「脱帽だよ。俺が生まれてから聴いてきた中でも最高のアルバムの一つだ」)がステッカーで貼られているが、ラーズの大ファンであるノエルの趣味趣向を考えるとこれは至極当然という感じ。全16曲45分(シークレット・トラック含む)。