★★★★
50セントのメジャー第2弾アルバム。前作は文句無しにヒップホップ史に残る名盤だったが、今作では「前作よりクオリティを落とさない事」を念頭に作られたためか、前作にあった風通しの良さがなくなっていて、少し出来は落ちるように思う。
ただ、その「息苦しさ」のせいで、(聞き流していると気付きにくい)黒人音楽における「洗練」がとても分かりやすい形でサウンドに現れているのだ。黒人音楽の歴史とは、虐げられている人々が差別や偏見の中で生きていくために身に付けた「洗練」の歴史でもある(アメリカの人種状況の変化に伴ってチカーノ・ラップが流行ったのは象徴的)。
今作の収録曲も、音の広がりと音圧がとんでもないドクター・ドレがミックスした曲を筆頭に、音響派もかくやという音空間が形成されている。で、そのサウンドは当然ながらクラブやらラジオでかかった時に人耳を引く為に作られているわけだ。まあ、ミックス・ダウンの際にわざわざ電波で音を飛ばしてラジオ映えするサウンドを作っていたモータウンの例を出すまでもなく、黒人音楽の音響は常にそういった実地性から導き出されてきたものなのであるが。
不満点。ミックスはともかくとして、ドクター・ドレはザ・ゲームのアルバムにかかりっきりになっていたためか、プロデュースした曲が2曲しかないのは残念。で、その代わりにエミネムがそこそこ頑張ってはいるんだが、(何度も書いている事だけど)エミネムの音作りって基本的には師匠であるドレの二番煎じだし、あんまりバリエーションもないから何だかなあ。50セントの唄心のあるラップも健在なんだが、前作における「In Da Club」や「What Up Gangsta」のような強力なフックがないのも惜しい。
まあ、何やかんやと書いておきて、結局は愛聴盤になりそうな予感はする。この感想文を書いている時も、実は5つ星にしようかすごく迷ったぐらいなのだ。というわけで、とりあえずアメリカのポップ・ミュージックに少しでも興味のある人間は聴いておくべきでしょう。