レッド・クロスの新作は、マフスのロイ・マクドナルドがいかに偉大なドラマーであるかを再認識させられる内容だった。というか、完全にロイがバンド・アンサンブルを先導しているという。この作品について語る時にマフスおよびロイについて言及しないのは片手落ちにもホドがあるってもんだす。俺はジューダス。
Redd Kross/Researching The Blues
★★★★★
1997年の『Show World』以来となるレッド・クロスのオリジナル・アルバム。活動停止期間こそあったものの、2004年には新作の準備に入っていることを発表し、2008年にはライヴDVD+ベスト・アルバムの『Got LIVE If You Must!』で新曲「Stay Away From Downtown」を披露していたので、ファンにとっては本当に待望も待望といえる作品だ。
本作を語る上で最も重要なのは、『Neurotica』期のラインナップに戻っているということ、つまりマフスのロイがドラマーの座に復帰(マフスと掛け持ち)しているということだ。ロック・バンドのアンサンブルはドラマーによって大きく左右されるので、本作のサウンドがレッド・クロス史上もっともザ・フー色が濃い、しなやかで瑞々しいものになっているのは、(マフスでの経験によってさらに腕を磨いた)ロイのキース・ムーン直系な爆裂ドラミングのおかげなのだ。アルバム・タイトル曲の「Researching The Blues」がフーの「無法の世界」ネタだったり、「One Of The Good Ones」が「Pure And Easy」ネタだったりと、ロイの再加入による顕著な影響はそこここで確認できるので、ぜひ実際に聴いてご確認を。その他にも「Uglier」がシャングリラスの「Leader Of The Pack」ネタ(「LOOK OUT! LOOK OUT! LOOK OUT!」)だったりと、ひねりと小技の利いた曲作りのセンスは相変わらず冴えまくり。しかも最終曲の「Hazel Eyes」は(スティーヴン・マクドナルドの妻である)アンナ・ワロンカーの「I Wish You Well」ネタ!*1 つまり、スティーヴン・マクドナルドのヒモ脱却への決意が高らかに鳴らされてアルバムが締め括られるわけだ。この構成も非常に感動的で素晴らしいじゃないか。
マフスのキムは「これこそが彼等の最高傑作!」と太鼓判を押してるけど、おいらもそれに全面的に同意。ビートルズがそうだったように、フーがそうだったように、チープ・トリックがそうであるように、マフスがそうであるように、レッド・クロスもやっぱり文句なしに最高のロックンロール・バンドだね。全10曲32分。これぞまさにパワー・ポップ! 必聴。
本作に対して予想される反応として、「もっと甘いメロディの曲を聴きたかった」的なことを言う輩が出てきそうな気がするんだが、レッド・クロスの過去作をきちんと聴けば分かるように、彼等ってハード・ポップなナンバーはたくさんあっても甘いメロディの曲って実はほとんど存在しないんだよな(ファウンテインズ・オブ・ウェインか何かと勘違いしているのかな?)。以前に「ハード・ポップ・バンドの系譜としてはレッド・クロス〜イナフ・ズナフ〜ワイルドハーツというラインがある」という話を書いたけど、甘いメロディの曲だったらレッド・クロスよりもイナフ・ズナフの方が遥かに多いっすよ。それに、そんなに甘いメロディを求めてるんだったら、そもそもロックなんて聴かない方がいいんじゃねえの?と思うけどね。
↑レッド・クロスの今回の新作はマージからの発売。これはスティーヴン・マクドナルド(&アンナ・ワロンカー)がインペリアル・ティーンのアルバムをプロデューサーし続けていた縁なんだろうな。おいら的にも、インペリアル・ティーンはシー&ヒムに次いで好きなマージ所属バンド。今年発売された最新作『Feel The Sound』だとスティーヴン・マクドナルドはエンジニアとして関わっているだけだけど、これもハジケてるミニマル・ポップで素晴らしいっす。