Butch Walker/The Rise And Fall Of Butch Walker And The Let's-Go-Out-Tonites
★★
相変わらずプロデューサーとして大忙しにも関わらず、前作『Letters』から2年という早いペースで発表されたブッチ・ウォーカーの最新アルバム。彼らしく、手堅く纏められた作品である。だが、それでは駄目なのだ。
なぜなら、アルバム・タイトルがデヴィッド・ボウイの『The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders Fom Mars』のモジリであり、イントロの「Oooh...Aaah」に続くオープニング曲「Hot Girls In Good Moods」でT.レックスの「20th Century Boy」をパロっていることからも明らかなように、ブッチ・ウォーカー本人が今作がグラム・ロック・アルバムであることを表明しているのだから、あくまでグラム・ロック・アルバムとして評価する必要がある。
そういう意味でいうと、今作はグラム・ロックに必要不可欠な「過剰さ」が決定的に欠けている。それはマーク・ボランのビブラート唱法を真似れば解決するといった問題ではないのだ。消費者の立場からしても、たとえば「天ぷらの盛り合わせ」と書いてある料理を注文したのに刺身の盛り合わせを出されたら文句をつけるのは当たり前じゃないか。今年発表されたロック・アルバムでいえば、徹底的に軽薄なエル・プレジデンテの『El Presidente』や、先日取り上げたジンジャーの『Valor Del Corazon』なんかの方がはるかに優れたグラム・ロック・アルバムであると思う(ついでに言っておくと、おいらがここ数年で最もグラム・ロック魂を感じたのはモロコの『Statues』だ)。
ブッチ・ウォーカーもブッチ・ウォーカーで、自身の資質を活かしてグラム・ロックをやるならばスレイドとかスウィート路線を目指す方が妥当なのに、デヴィッド・ボウイにT.Rexという底の浅いグラム・ロック観を露呈してしまっているのが情けないよなあ。ブッチ・ウォーカー関連の作品にイマイチのめり込めない理由が少し分かったような気がした。全13曲43分。
ちなみにおいらは、T.レックスはともかくとして、デヴィッド・ボウイには全く思い入れがない人間なんだが、彼の70年代のアルバムで最もグラム・ロック的であったのは、『The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders Fom Mars』でも『Diamond Dogs』でもなくて、徹底的にペナペナなソウル・ミュージック(本人曰く「プラスティック・ソウル」)を披露してみせた『Young Americans』であると考えているので念の為。