★★★★
最初においらの立場を明らかにしておくと、おいらがオアシスのアルバムで傑作だと思っているのは1stの『Definetely Maybe』だけで、世間では名盤との誉れ高い『(What's The Story) Morning Glory?』は駄作だと思っていて、以降の作品も全く評価していない(でも前作の『Heathen Chemistry』はちょっと好き)。というわけで、現在の彼等においらが期待しているものは何もないのだが、その期待値の低さを差し引いてもこの最新作はかなり良く出来ていると思った。
そもそも、オアシスというバンドは、60年代大好きっ子なんだけど自身の音楽的なボキャブラリーが決定的に少ないという意味で、実はラモーンズに近いタイプのバンドなのである。ただし、ラモーンズは3コードの3分間ポップ・ソングを20年以上も作り続けるというアルチザンとしての気概があったのに対し、オアシスは自分達をA級バンドと勘違いしているフシが見受けられる点で弱い。彼等の特徴であるモッサリしたリズムはその象徴と言えるだろう。
で、ドラマーにザック・スターキーを迎えた今作ではそういった弱点もいくらか改善されているだろうと思っていたんだが、オープニング曲の「Turn Up The Sun」からして相変わらずのモッサリズムでウンザリした。恐るべきはオアシスである。通称「水戸黄門」こと「The Importnace Of Being Idle」は、そういった自分達のリズム面での弱さを笑い飛ばした曲にも思えるけど、実際にはラーズの「Clean Prophet」ネタをやりたかっただけだろうしなあ。
ただし、アルバム全体として見ると、『Definetely Maybe』以来久々にB級バンドとしての軽みが戻ってきているように思う。全11曲43分と彼等にしては比較的コンパクトな構成にも好感。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「I'm Waitin' For The Man」調の「Mucky Fingers」はそんな本作を代表する1曲だ。ただし、この人達の欠点は、アルバム一の佳曲である「Keep The Dream Alive」を5分47秒もある大曲に仕上げてしまう所で、この曲や先行シングルである「Lyla」をせめて4分以内に収めてくれれば、アルバムの完成度はもっと上がっただろうに。ま、そこらへんも含めていつまでもチャーミングな人達ではある。