バイヤード・ラスティンが1963年8月28日のワシントン大行進を実現させるまでを描いた映画 『ラスティン: ワシントンの「あの日」を作った男』において、彼がキング牧師と再会しに行くシーンでリトル・リチャードの「Lucille」がフィーチャーされているのは、 リトル・リチャードのクィアネス(現在公開中のドキュメンタリー『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』を参照のこと)を踏まえた上で観るとめちゃめちゃ納得できる使われ方だ(ラスティンも同性愛者だったので)。
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米国女性の性の実態を初めて明らかにした『ハイト・リポート』の著者であるシェア・ハイト博士のキャリアと男性社会からのバックラッシュを追った映画『The Disappearance Of Shere Hite』は震えるほどに面白いドキュメンタリーだった。製作総指揮とナレーションはダコタ・ジョンソンが担当していて、観ているうちに彼女がソフトポルノの『フィフティ・シェイズ』シリーズに主演していたキャリアとシェア・ハイトのそれが重なってくる(シェア・ハイトが『007/ダイヤモンドは永遠に』のポスターのモデルだったなんて初めて知った)。映画では描かれていないが、シェア・ハイトが後に日本大学で客員教授を務めていたというのも数奇な運命だ。
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2024年2月のApple Musicの履歴まとめです。年明けからしばらく経って、ようやく2024年の新譜を聴き込んでいく季節になってまいりました。L・ディヴァインの『Digital Heartifacts』は現代的なシンガー・ソングライター作品として非常に理想的な内容だった。ニール・ヤングは先月に引き続きシグリッドのラジオの影響。ディジー・ラスカルみたいにキャリアの長いベテランが新譜を出すと旧譜を聴き返すことになるので、必然的に一気に順位が上がりがち(『Don't Take It Personal』は傑作!)。そして、ヴァクシーンズやコーティングのように地道に連続してランクインしてくるアルバムこそが年間ベストに入ってくるわけです。
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リアム・ギャラガーとジョン・スクワイアの共作アルバム『Liam Gallagher & John Squire』は「リアム・ギャラガーくんはジョン・スクワイアおじさんと遊べてたのしかったです」という意外と牧歌的なレイドバックした内容だった。リズム面で工夫がなくてグルーヴが弱いからこういう風に感じてしまうってのはある(プロデューサーはリアムのソロ作と同じくグレッグ・カースティン)。結果的に(パワー・ポップ路線ではない)ビッグ・スターみたいになっている楽曲があったりするのは面白い。「『Revolver』以来の最高傑作」という触れ込みはさすがに大袈裟すぎだ。
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Apple Musicの履歴まとめ(Apple Music Replay)、2024年は月別表示かーと思っていたら、2023年分の履歴も月別に表示できるようになってる! これは嬉しい。飲み屋で見せ合うのがさらに楽しくなるぞー。ちなみに2024年1月分はこんな感じ。まだ新譜が出揃ってないから面白みは少ないやね。年末年始は『ポール・サイモン全詞集: 1964-2016』と『ポール・サイモン全詞集を読む』を読みながら彼の全アルバムを聴き返しておりました。ケミカル・ブラザーズは来日公演の予習、ニール・ヤングはシグリッドのラジオの影響。ヴァクシーンズの『Pick-Up Full Of Pink Carnations』は早くも年間ベスト・アルバムの有力候補っす。