ベル・アンド・セバスチャンの新作『Late Developers』のオープニングを飾る「Juliet Naked」はタイトルからも分かるように映画『15年後のラブソング(原題:Juliet, Naked)』およびニック・ホーンビィによる同名原作小説へのオマージュ。そしてサウンドは80年代前半のビリー・ブラッグ風(ギターのトーンをかなり意識的に模倣している)。
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『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』が日本公開されることもあって、ミラマックスの配給で全米公開された『ウォーキング&トーキング』(サム・フリークス Vol.23で上映)とハーヴェイ・ワインスタインの関係が気になって調べたところ、当時のミラマックスでは『Emma エマ』(アニャ・テイラー=ジョイではなくてグウィネス・パルトローが主演の方)がハーヴェイ・ワインスタインの肝煎り作品だったので、『ウォーキング&トーキング』は冷遇されたとのことでした。結果的には彼の息が掛からなくて良かったと思う。
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サム・フリークス Vol.23で上映する『ウォーキング&トーキング』を手掛けたニコール・ホロフセナーの最新作『You Hurt My Feelings』は、『おとなの恋には嘘がある』で主演を務めたジュリア・ルイス=ドレイファスとの再タッグ作。今月末のサンダンス映画祭でワールドプレミアでA24が全米配給を行うとのこと。キャサリン・キーナーが出演していないのはちょっと残念すね。
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コリン・ファレルの八の字眉毛の困り顔を最も活かせるのはマーティン・マクドナー!というトラジコメディが『イニシェリン島の精霊』。ブレンダン・グリーソンとのW主演なので、マーティンの兄のジョン・マイケル・マクドナー作品的な趣きもあるものの、物騒なテイストはやはりマーティン・マクドナー作品という感じ。今から振り返ってみると、彼等が出演していなかった『スリー・ビルボード』こそがむしろ異色作だったという感じだな。全編がアイルランド内戦のメタファーで、本作の舞台となっている1923年の前年に「アイルランド独立の闘士」ことマイケル・コリンズが暗殺されている(以降の内戦はゲリラ戦の様相を呈していく)。ブレンダン・グリーソンがニール・ジョーダン監督作の『マイケル・コリンズ』に出演していた記憶も二重写しになる内容だが、日本の観客にどれぐらい伝わるんでしょうね。
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『アビー・ロード・スタジオの伝説』は監督/インタビュアーのメアリー・マッカートニーがポール・マッカートニーの娘ということもあってか、ギャラガー兄弟が2人ともかなりの「おすましモード」でインタビューに答えているのが面白い。あと、エルトン・ジョンがミュージシャンとして銭を稼げるようになって嬉しかったこととして、「好きなレコードを自由に買えるようになった」と答えていたのがさすがタワレコ最大の顧客という感じだった。彼がApple Musicで続けているラジオ番組『Rocket Hour』を聴いても感性が古びていないガチの音楽愛を感じるしな。リンダ・リンダズなんかをきちんと評価している人だし。