James/Girl At The End Of The World
★★★★★
『Hey Ma』で活動を再開して以降のジェイムズは『Seven』の延長線上にある祝祭感あふれるギター・ロックを展開していたんだが、前作『La Petite Mort』からその色合いがまた少し変わってきたように思う。
それが傍目にも分かる形で現れているのがソングライティングのクレジットで、『Hey Ma』『The Night Before』『The Morning After』の3作は(『Seven』と同様に)ティム・ブース/ラリー・ゴット/ジム・グレニーのコア・メンバー3名による作詞作曲であったのが、前作からはティム・ブース/ラリー・ゴット/ジム・グレニー/ソール・デイヴィス/マーク・ハンターの5名による作詞作曲となっているのだ。実際、サウンドの方もエレクトロニックな要素を積極的に導入してきており、『Seven』というよりは『Millionaires』辺りを彷彿させる内容に。本作に『Millionaires』期の共同作業者であった盟友ブライアン・イーノが久しぶりに参加しているのは決して偶然なんかではないはずだ。そして、エレクトロニック化を推し進めつつも、レコーディング自体は一発録りを基本としているのがジェイムズというバンドの面白いところ。もともと彼等はジャム・セッションから楽曲を紡ぎ出していくバンドではあるのだが、本作では(特にオープニング・ナンバー「Bitch」のイントロに顕著なように)そのアンサンブルの自然発生的なニュアンスが濃厚に記録されていて非常にスリリング。改めてバンドが最高に良い状態であることを実感させてくれる。
また、世界に対する強烈な怒りを生命力へと昇華させていくかのような「To My Surprise」や、若者版『夕映えの道』とでもいうべきPVも印象的な「Nothing But Love」などでドリス・レッシングの遺志を引き継ぐかのような表現が提示されているのも特筆すべき点だろう(『La Petite Mort』のブックレットに、アルバムの発表直前に亡くなった彼女への献辞が記されていたことにも注目)。やはり、ジェイムズは今の世界に必要なバンドだと思う。傑作。