映画『Obvious Child』(監督:ジリアン・ロベスピエール)観賞。★★★★★。
The Most Pro-Choice Movie Ever Made! 『アバウト・ア・ボーイ』がマーカス(ニコラス・ホルト)という「少年について」の物語であったと同時に、ウィル(ヒュー・グラント)というもう一人の「少年について」の物語でもあったように、本作『Obvious Child』は主人公ドナ(ジェニー・スレイト)の体内に宿った命と、ドナ自身、2人の「明らかな子供」についての物語である。
女性の予期せぬ妊娠を描いた映画、それもコメディとなると、たとえば『JUNO/ジュノ』や『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』のように何だかんだ言っても保守的な人達が安心できる方向に収束していくものだが、本作は徹底的にリベラル(だから保守的な人達はかなり怒っている模様)。それでいて「社会派映画」やブラック・コメディにはならずに、あくまでも心温まるロマンティック・コメディとして成立させているのだから恐れ入る。その覚悟と誠実さ、そしてその根底にある優しさに強く心を打たれた。
ちなみに「Obvious Child」というタイトルは、本作の主題歌としても使われているポール・サイモンの同名曲からの頂き。この辺りからも、ヴァンパイア・ウィークエンドなどの登場によって『Graceland』(およびそれ以降のアルバム)が再評価された今の時代の空気を強く感じることができる*1。傑作。
*1:余談だが『今日、キミに会えたら』で『Graceland』が主人公達をつなぐアイテムとして使われていたことも思い出した。