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映画『水曜日のエミリア』(監督:ドン・ルース)観賞。★★★★。
監督が(柳下毅一郎氏も絶賛していた)ブラック・コメディの傑作『熟れた果実』のドン・ルースであることに気付いて慌てて観に行った。だからドン・ルース組のリサ・クドローが出演しているわけね。映画を観た人はこういう大事なインフォメーションこそ声を大にして語って欲しいもんだぜ(とか言って他人に責任転嫁しておく)。
彼のフィルモグラフィーはブラック・コメディ(『熟れた果実』)→メロドラマ(『偶然の恋人』)→ブラック・コメディ(『ハッピー・エンディング』)と来ているので、本作はその順序に従って『偶然の恋人』路線のメロドラマ/ヒューマン・ドラマ。そもそも『偶然の恋人』の原題は『Bounce』、つまり「立ち直り」であり、本作も『偶然の恋人』と同様に大切な人の死からの「立ち直り」を描いているのだった。予告編からすると何だかとてつもなく辛気臭い映画みたいだが、そこはドン・ルース仕事なので冷徹な視線&捻りが入って飄々と突き進んでいくのがありがたい。っていうか飛行機が出てきた時にはまた『偶然の恋人』みたいに墜落するのかと思ってしまったじゃないか。
『熟れた果実』的な悪意がところどころで滲み出てくるのも楽しくて、息子が描く「家族のイラスト」には爆笑。で、それが物語のカギを握る重要な小道具になってくるんだから、『偶然の恋人』以上に「らしさ」が発揮されていると言えるのではないだろうか。昨年は『熟れた果実』オマージュの快作『Easy A』(リサ・クドローが出演していたのはその為)もヒットしたことだし、今こそドン・ルース再評価の時だな。