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映画『JUNO/ジュノ』(監督:ジェイソン・ライトマン)観賞。★★★★★。
未成年の女の子が出産する話、って要するに『誘惑の接吻』の現代版ですな。エレン・ペイジ演じるジュノは、無愛想でシニカルで、でもそこがチャーミングな、5年前ならばズーイー・デシャネルが演じていたようなキャラクターなんだが、それが特大ヒット&アカデミー賞受賞映画のタイトル・ロールになっているだなんて、なんだか感慨深いじゃないか。60年代を舞台とした『誘惑の接吻』では妊娠した女の子(ミーシャ・バートン)がやたらとメソメソしていたのに対して、ジュノの場合はのらりくらりと困難を乗り越えていくタフさを持っているのが非常に現代的だと思った。
特筆すべきは、本作が「アンチフォーク」的な音楽観を(おそらく初めて)明確に表現したハリウッド映画であるということ。以前にも書いたように、「アンチフォーク」という音楽ジャンルは、「フォークとかカントリーってパンクみたいにシンプルで生々しくてクールだぜ!」という認識から発生した、「世間の人々がフォーク・ミュージックに対して抱いている先入観へのアンチ」なわけだが(「フォーク・ミュージックに対するアンチ」ではない)、パンク好きを公言するジュノの演奏する曲が、音楽的にはフォークそのもののモルディ・ピーチズ「Anyone Else But You」のカヴァーであるというのは、まさにそういうことなのだ*1。スカーレット・ヨハンソンのアルバムよりもシー&ヒムの方が歓迎される土壌は、こういうところから生まれているのである。
*1:こういったことに最も自覚的だったのがメアリー・ルー・ロード。