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大傑作『Pleasant Screams』以来、約5年振りとなるクイアーズの新作オリジナル・アルバム。またもやメンバー総入れ替えが敢行され、まるで『リハビリ中断』の頃のピーズのはるのようにバンド統率力のなさを露呈しまくっているジョー・クイアーだが、作品の方もあの頃のピーズのように素晴らしいのだから、まあ仕方ないかという気分になってくるわな。
音楽的には相変わらずラモーンズ+ビーチ・ボーイズなポップ・パンク道を邁進しながらも、98年の傑作『Punk Rock Confidential』以上に(ということはバンド史上最高に)ギター・ポップ/パワー・ポップ色の強い作品となっている。かつてBMXバンディッツもカバーしていたスキーター・デイヴィスの名曲「恋はいじわる(I Can't Stay Mad At You)」が本作で取り上げられているのはそれを象徴しているといえよう。しかもビーチ・ボーイズの良質なパスティーシュである「Brian Wilson」なんて曲まであるのだから、クッキーシーン誌に載っているようなバンドの連中は本作を聴いてビーチ・ボーイズの消化の仕方について学ぶべき!と改めて思ったことだった。
50歳も目前だというのに、未だにこんなに瑞々しいギター・ロックを作り続けているジョー・クイアーは、もはやブライアン・ウィルソンやジョーイ・ラモーン以上に偉大なロックンローラーなのではないか。そう思わせるに十分な傑作ポップ・アルバム。決して『Pleasant Screams』を超えてはいないけれど、あのアルバムと違って変な悪ノリもせずにカッチリと纏まっているので、クイアーズの入門盤としても大推薦だ。ヘレン・ラヴ「Girl About Town」のカバーや、ベアーズのメンバーとしてマフス・ファンにもお馴染みのリサ・マーとの共作曲もあり。全13曲31分。必聴。
「Houston We Have A Problem」(MP3)