Jenny Lewis With The Watson Twins/Rabbit Fur Coat
★★★★★
ライロ・カイリーのジェニー・ルイスの1stソロ・アルバム。『Run Devil Run』の直後に取り上げる本作の冒頭曲は奇しくも「Run Devil Run」というタイトルなのであった。え? でもポール・マッカートニーとは何の関連もないんだろって? だが、本作ではトラヴェリング・ウィルベリーズ(ジョージ・ハリスン、ボブ・ディラン、トム・ぺティ、ジェフ・リン、そしてロイ・オービソンから成る覆面バンド)の「Handle With Care」が取り上げられているのだぞ。意識はしていなかったかもしれないが、ここまでビートルズのソロ・ワークを追っている彼女に、ポール・マッカートニーの同名アルバムが影響を及ぼしていないわけがないじゃないか。
しかも、アルバム自体もどこかトラヴェリング・ウィルベリーズっぽいのだ。「アコースティック・ギターで3コードを中心にジャカジャカやってたら手癖で良い曲が書けちゃったから、アレンジとかに凝って時間をかけるよりも原曲の良さを活かしてそのまま発表しちゃえ!」みたいな感じとでも言うか。こうしたソングライティング優先の結果として本作のカントリー色の濃いサウンドがあるんじゃないかと思う。何度も書いているけど、「ギターと3コード」という組み合わせでポップなメロディを追求していくと、最終的にはカントリーに行き着くものなのだから。
というわけで、ライロ・カイリーの時よりも軽みのある仕上がりで、おいらは『More Adventurous』以上に気に入ってしまったのであった。メアリー・ルー・ロードが好きな方にお勧め。全12曲37分。