
ファレリー兄弟のルーツである『三ばか兄弟』のリメイクと、彼等のキャリアの原点である『Mr.ダマー』の続編を完成させたことで、兄弟としての活動には一区切りついたということなのかな。TVシリーズでの共同作業は続けているものの、彼等が共同で映画を監督することはなくなった。『史上最高のカンパイ!〜戦地にビールを届けた男〜』は『グリーンブック』に続くピーター・ファレリーの単独監督作で、ベトナム戦争へ赴いた地元の仲間に直接ビールを届けに行った男の物語。『グリーンブック』と同じく、口が立つ男の嘘みたいな本当の旅の話だ。とはいえ、『グリーンブック』以上の極限状況を和らげようとしているのか、ややコメディへの揺り戻しが見られる(1968年のテト攻勢など、それ以上に過酷な描写も増えているわけだが)。名盤『Nuggets: Original Artyfacts From The First Psychedelic Era, 1965–1968』からのエレクトリック・プルーンズ「今夜は眠れない(I Had Too Much To Dream(Last Night))」の選曲が絶妙。たしかに主人公がベトナム入りしてからはほぼ不眠で物語が進んでいくので、だんだんと心配になってくる(つまり、それが戦争の現実というものなのだ)。
