The Who/Who
★★★★★
前作『Endless Wire』はドラムが打ち込みだったりピート・タウンゼント自身がドラムを叩いている楽曲が約半数を占めていたこともあって、フーのアルバムを聴いているというよりは、ピートのデモ音源集である『Scoop』シリーズを聴いているような、ピートのソロ・アルバムにロジャー・ダルトリーが参加しているような印象も拭えなかった。しかし、13年ぶりのオリジナル・アルバムとなった本作では、ザ・フーのロック・バンドとしての溌剌とした魅力が久々に爆発しているのだ!
ロジャー・ダルトリーのヴォーカルが自信に満ち溢れていて活き活きとしているのが本作の牽引力となっていると思うのだが、それもこれもバンド外での活動で『Going Back Home』『As Long As I Have You』と立て続けにヒットさせたことでソロ・シンガーとしての確固たる地位を築けたことが大きいのだと思う。実際、ピート・タウンゼントも本作について、「歌声を新たに蘇らせたロジャー・ダルトリーに刺激とやりがいと展望を与えようと書いた曲を集めた」と発言している。ロジャー・ダルトリーの頑張りがアルバムを引っ張っていて、ピーター・ブレイク(ビートルズの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』の歴史的なジャケットを作った人)がアルバムのジャケットを手掛けているという点でも、かつての『Face Dances』を彷彿させる内容で、さらにはそれに匹敵するような充実の内容に仕上がっていると思う。
ちなみにボーナス・トラックの「Got Nothing To Prove」はピート・タウンゼントが1966年に録音したデモ音源に音を重ねて仕上げているというマフスの『No Holiday』方式が採用されたナンバー(もちろんデモ音源なのでピートもキム・シャタックと同様に軽く流して歌っている)。マフスは『No Holiday』収録の「The Kids Have Gone Away」でフーの「The Kids Are Alright」へのオマージュを行っており、フーもライヴでマフスのキム・シャタックに対するトリビュートを行った直後でもあるので、『No Holiday』と『Who』は続けて聴いた方が絶対に楽しいです! 言ってしまえばこの2作品は「Pure And Easy」と「The Song Is Over」のような、こだまが響き合うような関係性になっているので。