映画『The Great Buster』(監督:ピーター・ボグダノヴィッチ)観賞。★★★★。
バスター・キートンの生涯を追ったドキュメンタリー。近年のピーター・ボグダノヴィッチならば、『マイ・ファニー・レディ』のような劇映画よりも、彼の批評家/歴史家としての側面が発揮された本作やトム・ペティのドキュメンタリーなどの方が遥かに良いです!
バスター・キートンについてのドキュメンタリーということでは、すでに『バスター・キートン ハードアクトに賭けた生涯』という3時間に及ぶ決定的な作品が80年代に発表されているわけだが、それでも本作に観る価値があるのは、最新の『スパイダーマン』シリーズを手掛けているジョン・ワッツが『スパイダーマン』のアクション&コメディ演出におけるバスター・キートンからの影響を語る!とか、ジャッキー・チェンの『プロジェクトA2 史上最大の標的』における『キートンの蒸気船』からの引用を解説!といった現代的な視点がきちんと用意されているからだろう。フランク・キャプラやオーソン・ウェルズがバスター・キートンについて語る貴重な映像も観られる(あと、ヘルツォークってそんなにバスター・キートンのこと好きだったんだ、とか)。
また、MGM傘下に入ってからの没落〜晩年の復活劇を映画の前半で済ませておいて、後半では全盛期の作品群の魅力を徹底的に紹介するという変則的な構成も本作ならではの大きな特徴といえる。主役の「死」でしんみりと終わるのではなく、あくまでもバスター・キートンのコメディアンとしての素晴らしさを徹底的に見せつけて楽しく終わるという構成の妙には、決して「泣かせ」に走ることのなかったキートンのコメディアン魂に対するピーター・ボグダノヴィッチの強いリスペクトを感じた。