チケット即完の激ヤバイベント「肌蹴る光線 ーあたらしい映画ー」の主宰者として知られる井戸沼紀美さんに、閑古鳥イベントの「サム・フリークス Vol.6」についてのコラムを書いていただきました!「肌蹴る光線」の今後の予定としては、ジョアン・ニコラウの『JOHN FROM』を7月21日(日)にアップリンク渋谷で、8月3日(土)8月8日(木)に京都の誠光社で上映、ジョナス・メカス特集を8月15日(木)にアップリンク吉祥寺で開催されるとのことです!
いまから遡ること115年ー1904年に「『女性らしさ』はこの世で最も野蛮な言葉だと思います」と自著の中で綴ったのが『若草の祈り』著者のイーディス・ネズビット。そしてそこからさらに遡ること3年ー1901年に自伝的小説『わが青春の輝き』を発表したのが当時21歳のマイルズ・フランクリンだった。
10月20日「文芸フェミニスト映画2本立て」として上映される1作目は『The Railway Children』を原題とする『若草の祈り』。Mr. Childrenが道玄坂のロイヤルホストでバンド名を決める際、この作品タイトルが参考のひとつになったそうだが、同作を一言で表すとしたらまさに「innocent world」だろう。いつも希望や尊厳を失わず、善良な心で生きること。辛いときには声をあげ、惨めさを押し付けられずに能力を発揮すること。そんな基本的な姿勢を全うするために、可憐に咲く花も怒りも、走り去る列車も、スカートの下に履くペチコートだって、自分や周囲の人を守るアイテムにしてみせる主人公家族の、タフで淀みない努力に心がゆれる。
2本目に上映されるのは『わが青春の輝き』。オーストラリア映画としては当時、46年ぶりの女性監督による長編作品だった。作中、主人公のシビラは「ピアニストになりたい」と願っただけで「自信過剰」と言われ、泣いていたなら「もっと女らしさを身につけないと」と告げられる。しかし彼女はピンクとブルーのドレスを提案されたあとでも、好きな色は「レモン色」と答えることで、颯爽と檻から抜け出そうとした。「ねえ、人生ってもっと素敵なはずでしょう?」「新しい服やピクニックぐらいじゃ私の心は誤魔化せない」。上映を企画した岡俊彦さんが同作を「文芸映画版『マッドマックス 怒りのデス・ロード』」と例えていることにに頷きつつ、鑑賞後には浜崎あゆみ“Boys & Girls”が脳内で自動再生された。〈輝きだした 私達なら / いつか明日をつかむだろう / はばたきだした 彼女達なら / 光る明日を見つけるだろう〉。まだ何も手にする前のシビラが「my career」に自ら「brilliant」と書き加えたように、現代を生きる私たちも、ありとあらゆる「デス・ロード」に早くラインストーンやラメを。
(「肌蹴る光線 ーあたらしい映画ー」井戸沼紀美)