『リリア 4-ever』については、リリアが監禁されている部屋のドアを叩いて助けを求めているのに、そこを通りかかったマンションの住人はイヤホンをしていて気付かないというシーンが非常に象徴的で、あそこにはルーカス・ムーディソンの伝えたかったことが強くこめられていると思う。つまり、あなたが気付いていないだけで、苦しんでいる人はあなたのすぐ傍にいる、ちょっと周囲を気にかけてみるだけで、あなたはその存在に気付くことができるんですよ、と。ルーカス・ムーディソンはこの作品を「あなたのすぐ隣で起こっている話」として描いている。だから、『リリア 4-ever』に対して「鬱映画」だとか「バッドエンド」といった紋切り型で他人事のようなクソつまらない感想を書き捨てる人は、リリアの存在に気付かないマンションの住人と同じレベルのクソだとおいらは思っています(本人がそのことに無自覚なところまで含めて。でもさあ、やっぱりそれじゃあダメだと思うんすよ)。
「サム・フリークス Vol.4」に向けて『リリア 4-ever』の新訳日本語字幕版を作っているんですが(自分で言うのも何だけど)かなりいい感じです。今までの上映版で汲み取れていなかったニュアンスとかもだいぶ分かるようになっているのではないかと。そもそも、これまでの上映版=シネフィル・イマジカでの放送版は通貨の単位を「ルーブル」で訳していたりして、根本的に何も分かっていない感じ(「旧ソ連」という表記から深く考えずにそう訳してしまったんでしょう。主人公達が使っているお札を見れば、この映画の舞台がエストニアで、通貨の単位は「クローン」であることが分かる)。