映画『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』のスタジオ・セッションの場面ではベーシストとしてきちんとキャロル・ケイが登場するけど、おいらが彼女のことを初めて知ったのは、メアリー・ルー・ロードが「Throng Of Blowtown」の中で「グルーヴを改善するにはキャロル・ケイを見つけなきゃ(We need the groove to improve/ So go find Carol Kaye)」と歌っていたから。
メアリー・ルー・ロードは自分の書く楽曲でも、カヴァー曲のチョイスでも、ポップ・ミュージック史に対する重層的なオマージュを好む人だ。というか、それこそが彼女の音楽性のキモだといってもいい。たとえば、同じく「Throng Of Blowtown」における「今夜、今夜 ビリー達が著作権を巡って決闘する(Tonight tonight the Billys will fight over copyright laws)」という歌詞は、スマッシング・パンプキンズの「Tonight, Tonight」がジェネレーションXの「Kiss Me Deadly」のパクリなので、(「Tonight, Tonight」のソングライターである)ビリー・コーガンと(「Kiss Me Deadly」のソングライターである)ビリー・アイドルが著作権を巡って争う、という意味。おいらはこういうところからポップ・ミュージックの楽しさを教えてもらったので、メアリー・ルー・ロードには心の底から感謝しています。