映画『クルーレス』の公開20周年を記念した、同作のサウンドトラックの特集記事。これを読んで気付かされるのは、1990年代及びそれ以降の音楽と映画を中心としたポップ・カルチャーの方向性を決定付けたのは1964年生まれの一人の女性だったということだ。彼女の名前はカリン・ラットマン。
何しろ、彼女がスーパーバイザーを務めたサウンドトラックは『レザボア・ドッグス』『ジャッジメント・ナイト』『パルプ・フィクション』『リアリティ・バイツ』『クルーレス』『グレイス・オブ・マイ・ハート』『フォー・ルームス』『ブギー・ナイツ』と、90年代を象徴する名作/傑作揃い。
曲間に劇中のダイアローグを挟み込む手法を確立した『レザボア・ドッグス』、ヒップホップ・アーティストとオルタナティヴ・ロック・バンドのコラボレーション・アルバムとなった『ジャッジメント・ナイト』(デ・ラ・ソウル×ティーンエイジ・ファンクラブ!)、「Misirlou」をリバイバル・ヒットさせた『パルプ・フィクション』、リサ・ローブの「Stay」が大ヒットした『リアリティ・バイツ』、ラウンジ・ミュージック・ブームを引き起こした『フォー・ルームス』。そして、『クルーレス』でのマフス、ジル・ソビュール、ライトニング・シーズという青春ロマコメ映画として的確すぎる面子のチョイス。多くの作品で顕著なのが、過去と現在を自由に行き来する中で世界観を構築していくDJ的な選曲センスで、これは明らかに「ヒップホップ以降」の感覚だったと思う。現在のポップ・ミュージックがこうした感覚の上に成り立っているのは分かる、よね?
個人的に忘れがたいカリン・ラットマン仕事は『フィーリング・ミネソタ』で、彼女のおかげで日本のTVCMでジョニー・ポロンスキーの「In My Mind」が流れてくるのを聴いた時は(その地味渋すぎる楽曲チョイスに)大きな衝撃を覚えたものだった。