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ロビー・ウィリアムスはソロ活動に専念、ジェイソン・オレンジは脱退して3人体制となった新生テイク・ザット初のアルバム。『Progress』の延長線上にあるエレクトロニック色の濃い作品(スチュアート・プライスも引き続きプロデューサーとして参加)だが、ロビーが不参加ということでエッジーな側面は抑えられ、比較的落ち着いたポップ・アルバムに仕上がっている。
前作から本作に至るまでの間にゲイリーもマークもソロ・アルバムを発表しているわけだが、それらと本作を聴き比べて気付かされるのが、唯一ソロ・アルバムを発表していないハワード・ドナルドの重要性だ。ドキュメンタリー映画『Look Back, Don't Stare』でロビーは「ハワード主導で作り上げられているコーラス・ワークこそがテイク・ザットのサウンドの基調を成しているんだ」とコメントしていたが、現在の彼等のエレクトロニックな要素にしても、DJとして活動しているハワードがいなければここまで大胆に導入されることはなかったであろう(『Look Back, Don't Stare』において彼が「Wait」にアフリカ・バンバータのビートを持ち込んでいたことも思い出される)。名曲「These Days」のPVでも1人だけ脱ぎ要員として大活躍していたし、つまりテイク・ザットの本質とはハワード・ドナルドなのである!と結論づけたいところだ。96年のバンド解散時に、ひどく落ち込んでテムズ川への飛び込み自殺を図ろうとまでした人物。テイク・ザットのメンバーの中でもっともテイク・ザットを愛していた人物。本作ではそんな彼の柔らかな歌声がこれまで以上に前面に押し出されているのも嬉しい(ということは、ゲイリーもマークもその本質に改めて気付いた、ということだと思う)。
英国ポップの真骨頂といえるウェルメイドなポップ・ソングが揃った文句無しの傑作。ジェイソンの脱退騒動の最中に制作されたにも関わらず、それを人生の糧にしていくかのようなタフネスと前向きさに溢れているのが素晴らしい。ただ、ジェフ・リンのプロデュース曲「Fall Down At Your Feet」がGoogle Play版のみへの収録で、CDには未収録となってしまったのはちょっと残念。テイク・ザットがビートルズの遺伝子を引き継ぐアーティストであることを証明する1曲だったのにー。