★★★★★
映画『ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日』や『ニード・フォー・スピード ライバルズ』に楽曲提供をしたりしていたにも関わらず、RCAレコーズとの契約が打ち切られて足掛け2年に渡ってレコーディングが続けられていたアルバムがお蔵入りになってしまったKフレイ。とはいえ、そこから一念発起してこうやって自主制作で待望の1stフル・アルバムを再びゼロから完成させたのだから、まさに「Don't Let It Bring You Down(そんなことでクジけてんじゃねえぞ)」を地で行くタフネスを見せつけてくれたのだった。アルバム・タイトルからしてラッセ・ハルストレムの映画『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』へのオマージュだし、「“不幸”を決して“不幸”として受け止めない」という彼女の姿勢がよく表れていると思う。
Kフレイという人はディジー・ラスカルから多大な影響を受けているラッパーとしての側面と、リズ・フェアの「Fuck & Run」をカヴァーしてしまうようなオーセンティックなシンガー・ソングライターとしての側面があるわけだが、前述のような紆余曲折をたどった本作は彼女の後者の側面が強く出た内省的なアルバムとなった。ただし、ビートはあくまでも最先端の自家製ヒップホップなのがポイントで、そういう意味ではたとえばストリーツやM.I.A.の諸作などと同様に、21世紀における正統なシンガー・ソングライター像の一つの雛形を示している作品といえるのではないだろうか。全11曲44分。
↑Kフレイによるベック「Devil's Haircut」のカヴァー。これは彼女の方向性がすごく分かりやすい形で表現されていると思う。