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ダイ・アントワードとしてのデビュー当初からニンジャが口にしてきたアルバム5枚計画に従えばちょうど中間地点にあたる本作は、彼とヨーランディのキャリアを一気に総括するかのような総力戦といえる内容。
何しろジャケットからしてマックス・ノーマル時代の『Songs From The Mall』(13年前のアルバム!)を凶暴化させたものだし、19年前にモロにサイプレス・ヒルなオリジナル・エヴァーグリーンというラップ・グループでレコード・デビューを飾ったニンジャ(デビュー曲のタイトルは「Puff The Magik」!)が、今回はついに本家サイプレス・ヒルのDJマグスを招喚! さらには、かつてライヴで共演したエイフェックス・ツインの「Ageispolis」を引用したナンバー(「composition based on a track by U KNOW WHO used with permission cunts」という人を小馬鹿にしたクレジットからも彼等の交流の深さが伺える)や、マックス・ノーマルTV時代のメロディアスな名曲「Moon Love」の再収録まであるのだから。
ニンジャとヨーランディがこれまでにないほどに互いの関係に深く踏み込んでラップした「Ugly Boy」は素晴らしいラヴ・ソング。メガドライブのゲーム『ベア・ナックル 2(Streets of Rage 2)』で使われていた「Expander」をサンプリングした「Happy Go Sucky Fucky」で相変わらずの日本好きなところも見せてくれる。セルジュ・ゲンズブールの「海、セックスそして太陽」を引用した「Sex」や、エミール・クストリッツァの映画『黒猫・白猫』ネタの「Pitbull Terrier」などでのセンスも超冴えまくり。
アルバム・タイトルの『Donker Mag』は英語で「Dark Power」を意味するアフリカーンス語で、ここから感じられるのは「はみ出し者であることの気概」を絶えず表現し続けてきた彼等の強い意地と意志だ。濃密な愛と憎しみと悪意とユーモアとポップネスをゲロと一緒に吐き出した文句なしの傑作。ちなみに本作は全米アルバム・チャートで37位まで上昇。もうこのまま世界制覇しちゃってくれよ。南アフリカの希望の星だ。全16曲50分。