★★★★★
元ルーシー・ラヴズ・シュローダーのリーダーにして、元レンタルズでもあるサラ・レイドルの新作3rdソロ・アルバム(彼女自身のソロ・プロジェクトとしては5枚目の作品。この辺りの作品枚数の数え方は色々とややこしいので、前作『Four』の感想を参考にするよろし)。
前作がルーシー・ラヴズ・シュローダーの再結成アルバムと言ってもいいような内容だったのに対して、本作はほとんどの楽器をサラ一人で演奏した本当の意味でのソロ・アルバム。そもそも彼女のレコーディング・アーティストとしてのスタート地点はフレッド・サヴェージ・ファンクラブ名義の一人宅録アルバム『Jellybeans With Belly Buttons』だったわけで、そういう意味で完全なる原点回帰を果たしたともいえるのだった。
たとえばカラミティ・マグネットにおいては彼女のビートルズ趣味が強く出ていたように思うのだが、本作では「Little Ones」がモロにビーチ・ボーイズの「Good Vibrations」だったりと、彼女のビーチ・ボーイズ趣味が強く反映された仕上がり。自宅スタジオでの多重録音ということで、ひたすら好き勝手にやることができたのだろう、リラックスした(でも完成度の高い)小品ポップ・ソング集ということで、サラ・レイドル版『Friends』といった趣きもある。ゲスト・ヴォーカリストとしてメアリー・ルー・ロードが参加(!)しているのも嬉しいね。近年の彼女は色々と試行錯誤を繰り返していてイマイチ突き抜けきれていない印象だったんだが(カラミティ・マグネットもけっきょくアルバムをリリースできずに活動が止まってしまったし)、「ひとりに戻るんだ」というわけで、一人に戻ってようやく壁を乗り越えられたのかもしれないな。最後は誰だって一人ぼっち。そこを引き受けられる人は強いぜ、マジで。傑作。全10曲35分。