Phil Spector/The Philles Album Collection
★★★
Kirsty MacColl/Desperate Character
★★★★★
フィル・スペクターのフィレス・レコーズからリリースされた6枚のアルバム(+おまけ1枚)がボックスセットでまとめてCD化*1。もちろん歴史的な価値は★★★★★なんだが、実際に今聴いてタイムレスな魅力をビンビンに感じられるのは、ロネッツの唯一のアルバム『Presenting The Fabulous Ronettes Featuring Veronica』ぐらいかな。フィレス・レコーズのベスト・アルバムである『Philles Records Presents Today's Hits』にしたって、ロネッツがブレイクした直後の作品なので、その後の重要なナンバーが幾つも欠けているし。ちなみに『The Crystals Sing The Greatest Hits, Vol. 1』は厳密にはクリスタルズのベスト盤というわけではなくて、クリスタルズのヒット曲+穴埋めとして当時のヒット曲をクリスタルズが歌っているという寄せ集めコンピレーションなので要注意。このアルバムに限らず、クリスタルズの酷い扱いは今回のボックスセットで改めて浮き彫りになっていてかなり可哀想。だってダーレン・ラヴ兄貴やロネッツが歌っているナンバーが平然とクリスタルズ名義で発表されているんだもの。
あとはまあ、歌謡曲としての宿命ゆえに、シングルだと「キュン!キュン!キュン!」(ホタテをなめるなよ)なナンバーを連発していても、アルバムになると湿っぽくてタルいバラードをフィーチャーされるのがやっぱり辛い。で、この辺りのブリル・ビルディングのジレンマを自作自演によって解消したのが例えばビートルズの『A Hard Day’s Night』であったり、シー&ヒムの『Volume Two』であったり、カースティ・マッコールの『Desperate Character』であると個人的には思っている。というかカースティ・マッコールの『Desperate Character』ってシー&ヒム好きは必聴な、60年代ポップスのエッセンスが凝縮された傑作なので、長年に渡って未CD化なのが本当に残念だよなー。とか思っていたら、権利関係の問題がようやく解決されたらしいので、2012年にはついに再発されるらしいっすよー。来年はマフスの新作も出るし、色々と楽しみな年になりそうだねえ。そういえばマフスはロニー・スペクターのお気に入りバンドの1つで(ジョーイ・ラモーンからの紹介で知ったらしい)、2004年には「Ronnie Spector with The Muffs」なんてクリスマス・ショーも行われているのだった。
*1:内訳は、クリスタルズ『Twist Uptown』『He's A Rebel』『The Crystals Sing The Greatest Hits, Vol. 1』、ボブ・B・ソックス&ブルージーンズ『Zip-A Dee-Doo-Dah』、ロネッツ『Presenting The Fabulous Ronettes Featuring Veronica』、フィレス・レコーズのベスト・アルバム『Philles Records Presents Today's Hits』、おまけとしてフィレス・レコーズからリリースされたシングルのB面曲(インスト)をまとめた『The Phil Spector Wall of Sound Orchestra』。