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同名バンドが多数いるのでややこしいレフトオーヴァーズの4thアルバム。もともとこの人達はグリーン・デイを輩出したことで知られるルックアウト・レコーズ周辺の人達から絶賛されていた(どちらかといえば「パンク」寄りの)ポップ・パンク・バンドであり、ベン・ウィーゼルをプロデューサーに迎えた前作『On The Move』でパワー・ポップ路線にグッと接近したことによって大きな成長を果たしたのだった。本作はその路線をさらに推し進めた、ひとつの到達点というべき傑作に仕上がっている。
注目すべきは、MC・ラーズの傑作『This Gigantic Robot Kills』と同じくライナス・オブ・ハリウッド(本作のプロデューサーでもある)とジャレット・リディック(from ボウリング・フォー・スープ)が設立したクラッピー・レコーズが発売元ということもあって、ナーフ・ハーダーのパリー・グリップにドナスのブレット・アンダーソンと、ゲストが同作と重複しているという点。まあ、天の邪鬼な奴(≒おいら)はどうせ「いや、『This Gigantic Robot Kills』のゲストで肝だったのはウィータスとアル・ヤンコビックだったわけだしさあ」とか言い出すに決まっているわけだが、彼等の代わりに参加しているのがマフスのキム・シャタックに、ロマンティックス(!)のコズ・キャンラーに、ルビナーズのジョン・ルービンとくるんだから万事OKだ。少なくとも「チープ・トラックのバン・E・カルロスにドラムを叩かせておけばいいんだろ」とコネに寄り掛かるだけで終わったティンテッド・ウィンドウズなんかよりも遥かに本気のパワー・ポップ愛が感じられるってもんだぜ。
ビートルズ「All My Loving」のリズム・パターンを下敷きにした「Thinking About Her」や、フィル・スペクターがプロデュースしたラモーンズ「Do You Remember Rock 'N' Roll Radio?」のメロディが顔を出す「You Know What You Do」などなど、ズーイー・デシャネル(シー&ヒム)なんかとの同時代性を感じさせてくれる部分がきちんとあるのは嬉しいし、バズコックスのピート・シェリーのソロ・ヒットと同名異曲の「Telephone Operator」なんてナンバーがあったりするのも楽しい。「Can't Stop(止まらないぜ)」とアルバムをスタートさせて、『On The Move』に収録されていた「Dance With Me」のリメイク〜ルビナーズ「Party 'Till We Die」のカヴァーと、駄目押しのような名曲の連打でアルバムを締めくくるという構成まで含めて完璧。必聴。全14曲36分。
と、書いてきたらid:lyme-recordsさんのレビューと内容が被りまくっちまったぜ。ま、このアルバムをきちんと紹介しようと思ったらこういう書き方にならざるを得ないよね。つうわけでid:lyme-recordsさんの『Eager To Please』評も必読のこと。
↑「Day Tripper」をカヴァーするビートリーなレフトオーヴァーズ。