Lily Allen/It's Not Me, It's You
★★★
本作が2009年を代表するポップ・アルバムとして扱われることには何の異論もないし、実際に楽曲の完成度はものすごく高いとは思うんだが、前作と同様に心の底から楽しめないのは彼女が2世タレントだから? でも、そんなことを言ったらズーイー・デシャネルだってカースティ・マッコールだって2世タレントだし、それだけが問題じゃないはずなんだ。
自分なりに考えてみて、アルバム・タイトルの『It's Not Me, It's You(私じゃなくてあなたよ)』に顕著なように、彼女の個性とされている毒っ気には、エミネムのそれと同質のヌルさ、自己防衛が先に立っている小賢しさがあるから、という結論にとりあえず到達した。そして、それこそが悪い意味での2世タレント臭を放っているんだな。「Sad Ass Stripper」で刺し違える覚悟をもって「ジェンティーナ、お前のキャリアの息の根を止めてやるぜ」と歌ったソヴ子ぐらいの気合いの入った悪意の方がおいらは好きだ。
ちなみに本作のハイライトはテイク・ザットの「Shine」(名曲!)を大胆に引用した(というかただの替え歌)「Who'd Have Known」。これって要するに、英国を代表するポップ・シンガーとなったリリー・アレンが、自分よりもさらに大きな存在、つまり現在の英国音楽界を象徴する存在として彼等に敬意を払っているということなわけで、このことを無視して本作を語るのは片手落ちもいいところ、ビートルズをいないことにしてオアシスを語るのと同じようなものなんじゃないかと思う。こんな状況じゃあ、id:lyme-recordsさんじゃないけど、「本国イギリスで驚異的なセールスを記録している(2008年度で一番の大衆性とポップネスを兼ね備えた)脅威のポップアルバムをスルーしている各雑誌はアホじゃないかと思う」ぐらいのことだって言いたくなるぜ、マジで。全12曲43分。
↑彼等の最新シングル「Up All Night」のPVも「This is England!」な内容なので必見。