Original Soundtrack/Yes Man
★★★★
全米興収チャートでめでたく1位を獲得したジム・キャリー&ズーイー・デシャネル主演映画のサウンドトラック。
アルバムの前半9曲はイールズの簡易裏ベスト。オリジナル・アルバムは何枚か持っているけれど、2枚組の裏ベスト集『Useless Trinkets』を買うほどではないというリスナー(=おいら)にとっては、彼等の楽曲を改めて聴き直す良い機会。とりあえず(映画『ロード・トリップ』のテーマ・ソングとしてお馴染みの)「Mr. E's Beautiful Blues」を使っておけばいいや、みたいな安易な選曲になっていないのも嬉しい。本作のために書き下ろされた新曲「Man Up」が「今こそ男を上げる時〜♪」という歌詞であることから推測するに、きちんと映画のストーリーに則した選曲になっているんじゃないかと思う。
でもまあ本当の目玉は以降の4曲で、なんとこれがエレクトロ・パンク・バンドのヴォン・アイヴァ(ボン・アイヴァーじゃないぞ!)とズーイー・デシャネルによる映画限定コラボレーション・ユニット、Munchausen By Proxyの楽曲なのだ! フラットパック連中の諸作やジャド・アパトウ組の作品の音楽監修を手掛けているジョナサン・カープがプロデューサーを担当していることもあって、現代のハリウッド・コメディの息吹が感じられる仕上がり。つまりデッドパンでアホなことをやるズーイーのコメディ・センスが存分に発揮されているってこと。
事前に書き下ろされていた映画と同タイトルの「Yes Man」を除くと、どれもが彼女達の1週間に及ぶリハーサル期間中に書き下ろされた楽曲で、ズーイーもただ歌うだけではなくてきちんとソングライティングにも参加しているのが偉い。ヴォン・アイヴァの唯一のフル・アルバムである『Our Own Island』に比べるとハードな印象が薄くなり、どれもが人懐っこいメロディに富んだ楽曲になっていることからも、ズーイーの貢献度はかなり大きいものと思われる。
イールズのEと(ズーイー・デシャネル演じる)アリソン・モニアーがお互いのキャリアを称える嘘ライナーノーツまで付いた丁寧な作りで全13曲41分。サントラにこれだけ力が入ってるんだから、肝心の映画の方も期待できるはず。邦題は『イエスマン “YES”は人生のパスワード』で、日本公開は来年の3月とのこと。
YES MAN - "Sweet Ballad" music video by MUNCHAUSEN BY PROXY
Uh-huh ~ Munchausen by proxy & zooey deschanel
Eels - Mr E's Beautiful Blues
↑『ロード・トリップ』は映画としてはあまり面白くないんだけど、トム・グリーンの狂言回しっぷりとこの曲のおかげでそんなに印象は悪くない。っていうか『ロード・トリップ』ってショーン・ウィリアム・スコットにエイミー・スマートにブレッキン・メイヤーにDJクオールズと、今から考えるとものすごい豪華な出演陣だよな。ちなみにこの曲のコード進行はG→C→D→Cを延々と繰り返すという単純なもの、って要するに「Louie Louie」なんだが。Dragon Ashの「Life Goes On」は明らかにこの曲を下敷きにしてますな(キーもGで同じだし)。