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『アデルの恋の物語』ってそういう駄洒落はどうでもいいですかそうですか。先行シングル「Chasing Pavements」が全英シングル・チャートで2位を記録する大ヒット、続いて発表された本作が全英アルバム・チャートで初登場1位を獲得したことで、すでに各メディアで2008年の最優秀新人と目されているアデル。そのおかげで、彼女が前座として同行するジャック・ペニャーテの来日公演はプラチナ・チケット化、と。いやあ、チケット買っておいてよかったあ。
マーク・ロンソンが参加しているために、彼がプロデュースを手掛けたエイミー・ワインハウスと比較されたりもしているけれど、いやいや、それは少し的外れではないだろうか。メイン・プロデューサーがジャック・ペニャーテの『Matinee』と同じくジム・アビスということもあって、基本的なサウンドはアコースティック・ギターの弾き語りを中心に組み立てられた、エヴァ・キャシディなどの系譜に連なるブルー・アイド・ソウルだし、東欧っぽいコブシを利かせたアデルの歌唱法は明らかにレジーナ・スペクターの影響下にあるものだ。そういえばケイト・ナッシュもレジーナ・スペクターからの影響を公言していたし、UKのポップ・ミュージック史に残るであろう女性シンガー・ソングライターのムーヴメントに、ニューヨーク在住のロシア人であるレジーナ・スペクターが大きな影響を与えているだなんて、なんとも素敵な話じゃないか。
それにしても、このジャケットは完全な詐欺だよなあ。実際のアデルは映画『待ちきれなくて…』のローレン・アンブローズをさらに一回り太くしたような肝っ玉姉ちゃんなのに。ボブ・ディランの「Make You Feel My Love」のカヴァー(『Time Out Of Mind』からの選曲ってのがいかにも19歳らしい)を含む全12曲43分。
Adele - Chasing Pavements