新生エヴァークリアの新作『Welcome To The Drama Club』の発売を記念して覚え書き。
エヴァークリアって日本だと『Sparkle And Fade』の頃のグランジの残党バンド的なイメージが強いせいか全く人気がないけど、もっとギター・ポップ/パワー・ポップ好きが聴くべきバンドだと思う。ボーカル兼ソングライターのアート・アレクサキスの声質はハスキーだけど、メロディ・センスは完全にパワー・ポップ・バンドのそれだし。強いて言えばユー・アム・アイなんかに近い立ち位置というか。
映画での印象的な使われ方も多いので、映画ファンにとっても無視できない存在だ。『タイムトラベラー/きのうから来た恋人』では「I Will Buy You A New Life」が、『デトロイト・ロック・シティ』では「The Boys Are Back In Town」(シン・リジィのカバー)が、『ロック・スター』では「Rock Star」が、それぞれ効果的な使われ方をしていたし。既製曲の使い方には定評のある名監督エイミー・ヘッカリングが、『恋は負けない』においてエヴァークリア本人達を出演させて、3年前(当時)の微妙に古いヒット曲「So Much For The Afterglow」をわざわざ演奏させていたのは、やはり単なるタイアップとは考えにくい。つまり、それぐらい(≒ウィータス級)の重要バンドであるということなのだろう。
また、印象的なPVも多くて、「I Will Buy You A New Life」のPVは『マグノリア』のラストの感動を凝縮したかのような晴れやかさだし、ヴァン・モリソンの名カバー「Brown Eyed Girls」のPVは『恋は負けない』級の胸キュンものだし、「Wonderful」のPVは『イカとクジラ』を超える、家庭内不和を描いた傑作だ。というか、おいらが『イカとクジラ』をそこまで高く評価できないのは、エヴァークリアが「Wonderful」1曲で表現した内容に全く敵っていないと思っているからなのだ。というわけで「Wonderful」の歌詞を訳したのでPVと併せて掲載しておこう。上記の曲が網羅されているベスト盤もぜひ聴いてみてくれ。
Everclear - Wonderful (Promo Video)
「Wonderful」 by Everclear
悲しすぎる時は目をつぶって
悪いものを見てしまっただけだと言い聞かせるんだ
目をつぶって10数えたら
全てが過ぎ去っているようにと祈りながら
昔の家に戻りたいよ
僕の寝室のドアにスター・ウォーズのポスターが貼ってある家に
だから、目をつぶって10数えたら
また全てが元通りになっているといいんだけど
パパとママにはもっと仲良くしてもらいたいんだ
二人の叫び声が
二人の喧嘩している声が聞こえる
二人が悪い言葉で罵り合ってるのを聞くと泣きたくなるよ
だからベッドに潜り込んで目をつぶるんだ
夢の中では天使が僕に笑顔をくれるから
彼等が「いつの日か、全ては上手くいくはずなんだよ」と言っているのを聞くと
少しはマシな気分になれるから
小さい子供にとっては
世界はあまりにも大きすぎて
約束こそが全てなんだ
どうしてあなたが目に涙を溜めながら
笑顔で「全て上手くいくよ」なんて言うのか
僕にはちっとも理解できないよ
だから、「世界は素晴らしい」だなんて言わないでくれよ
学校にいる時は
周りのみんなには「平気だよ」って言ってるんだ
いつだって笑ってるから
下校のチャイムが鳴っても
僕が家に帰りたがっていないってことにみんなは気付かないんだ
家に帰ると部屋に閉じこもって
空想の世界の中で新しい人生を生きている振りをするんだ
あなたが「いつの日か、全て上手くいくよ」って言ったって
僕は絶対に信じないんだから
小さい子供にとっては
世界はあまりにも大きすぎて
約束こそが全てなんだ
どうしてあなたが目に涙を溜めながら
笑顔で「全て上手くいくよ」なんて言うのか
僕にはちっとも理解できないよ
「いつか分かる日が来る」なんて
「二人は違う道を歩まなきゃならない」なんて
言わないでくれよ
あなたの友達になんか会いたくないよ
また一からやり直したくないよ
僕は前みたいに家族一緒の暮らしがしたいだけなのに
このまままじゃ心に憎しみしか残りそうにないよ
このままじゃ全てが嫌いになってしまいそうだよ
だから、「世界は素晴らしい」だなんて言わないでくれよ