Whatever happened to pong?さんの10月17日付の記事の影響で『ベイビー・トーク』をDVDで再見して、エイミー・ヘッカリングの素晴らしさを再認識した。
映画に限らず、女性アーティストの場合、どちらかと言えば生理や本能を優先させた作品を作る人が多く、世間でもそういう作品(人)をもてはやす傾向が強いように思う。例えば映画界で言えばソフィア・コッポラとか、音楽界で言えばビョークとかさあ。
だが、エイミー・ヘッカリングはその全く逆のタイプで、あくまでもウェルメイドな作品を作る事を常に心掛けている職人監督なのである。まあ、だからこそ世間的な評価がなかなか上がらないんだろうが、おいらは絶対に支持するぞ。この良さは(エイミー・ヘッカリングもお気に入りの)マフスの良さに通じる所があると思うんだがどうか。
で、まあそんなウェルメイドな作品の端々から、彼女の(厳しい人生観を踏まえた上での)優しい人柄が滲み出ているのがまた良いんだよなあ。たとえば『ベイビー・トーク』の主人公の二人を見てみても、ジョン・トラボルタはしがないタクシー運転手をやりながら夢を追い続けている世渡り下手な(世間から見れば)ダメ男だし、カースティ・アレイは30代後半にもなって最低男の子供を妊娠してしまったアンラッキーな年増女だ。
でも、エイミー・ヘッカリングは、そんなツイていない人生を送っている二人にハッピーエンドを迎えさせてあげるのだ。そこには「この世界で生き抜いていくのはあまりにも大変だし、幸運を手にする事が出来るのはほんの一握りの人達だけ。でも、だからこそ映画館の中でくらいみんなに夢を見せてあげたい」という明確で強靭な意志を感じるし、だからこそ観客(=おれ)の胸に真摯に響いてくる映画になっているのだと思う。
そんなエイミー・ヘッカリングの来年公開予定の新作『I Could Never Be Your Woman』は、主演がミシェル・ファイファーってのがアレだけど、共演がトレイシー・ウルマンにポール・ラッドなんだから期待出来るはず。絶対に日本でも公開しろよな!