★★★
ビッグ・タイマーズの「(ちょっとだけ)ブサイクじゃない方」ことベイビーの、バードマン名義での2ndソロ・アルバム。前作ではティンバランドやネプチューンズ、P.ディディーといった豪華な面子が参加していたのに対し、今作では数少ない子分どもが僅かにサポートしているだけ。ベイビーはキャッシュ・マネー・レコーズのCEOとしても知られているわけだが、「Cash Money Is An Army」なんて曲を出していたのも今は昔、すでに直属の所属アーティストはリル・ウェインだけになってしまっており、栄枯盛衰だなあ、なんて思ってたのよ、聴く前は。
プロデューサーはいつものマニー・フレッシュではなく、クライム・ファミリーというお抱えのプロデューサー陣をメインに起用。基本的にはマニー・フレッシュの方法論の拡大再生産だが、なかなか手堅く仕上げており、彼が関わった4曲を際立たせるだけには終わっていない。マニー・フレッシュ自身の仕事は相変わらずメロディアス&高品質で、やはりクライム・ファミリー仕事と比較すると別格と言ってもいい完成度。おいらはマニー・フレッシュのオールドスクール風なフロウが大好きなので、彼の声が聴ける「We Getting It On」が最も気に入った。
まあ、どれだけバックの面々が頑張っても、ベイビーは基本的には単なるビジネス・マンなので、ラップ・アルバムとしての限界はあるんだが、少なくともキャッシュ・マネーの底力を感じさせる佳作にはなっている。キャッシュ・マネー・レコーズとしても、昨年はリル・ウェインの『The Carter』やマニー・フレッシュの『The Mind Of Mannie Fresh』といった傑作を出したり、ティーナ・マリーやキキ・ワイアットを獲得したりと、何とかレーベルとしての体制は維持出来ているようで、今後もしばらくは安泰かも。全米アルバム・チャートでも初登場9位と健闘。全17曲73分。