★★★
要するにセックス・ピストルズに対してのP.I.L.のような音楽をイアン・ブラウンは作っていきたいんだろうな。P.I.L.と違って人懐っこいメロディが常に伴っているのは、ジョン・ライドンよりもイアン・ブラウンの方が性格が良いって事なのだろう。でも、それと音楽としての面白さは別問題だ。
元々この人は歌の上手い人じゃないけれど、歳を重ねるごとにさらに声質がもっさりしてきているだけに、2ndアルバムからの路線を無難に踏襲しただけの工夫のないトラックでは、そろそろ聴くのがつらくなってきた感がある(ホーン・アレンジのセンスの悪さは致命的)。スタッフもその頃とほとんど変わらないだけに、そろそろ外部の人間と積極的に絡んでみた方が良いんじゃないだろうか。それこそUNKLEと共作した「Be There」みたいにさ。
3年前の前作「Music Of The Spheres」には不参加だったアジズ・イブラヒムの復帰により、再びアラブ風のギター・フレーズが聴けるのは嬉しい。あの何でもありの無国籍感は、イアンの音楽に対しての良心的な態度を象徴しているように思えるのだ。本作の白眉は最もビートが強力な「Kiss Ya Lips (No I.D.)」。ノエル・ギャラガーとの共作曲「Keep What Ya Got」が話題になっているが、まあ曲としてはそれほど大したものではない。