映画『Good Vibrations』(監督:リサ・バロス・ディーサ&グレン・レイバーン)観賞。★★★★★。
アンダートーンズなどを世に送り出した北アイルランドのレコード屋/レコード・レーベル、グッド・ヴァイブレーションズの創設者である「ベルファスト・パンクのゴッドファーザー」ことテリー・フーリーの伝記映画。これは素晴らしかった。当時の北アイルランドのパンク・シーンを捉えたドキュメンタリー映画『シェルショック・ロック』について、本作にも登場するルーディのブライアン・ヤングは「ここには、階級や宗教によって分断された人々が地元の誇りと自覚を形成し、仲間たちを刺激し、自分を見つめ、街に出て、自分たちがやりたいことに取り組む姿が描かれている」と書いていたが、それはそっくりそのまま『Good Vibrations』にもあてはまる。そしてもちろん、ルーカス・ムーディソンも言っているように「劇映画でしか描けない真実もある」のである(ジョン・ピールがラジオで「Teenage Kicks」をかける時の高揚感!)。おいらはテリーがレコード屋を始めようとするところからもう涙が止まらなかったんだが、それはおいらがアホだからしょうがないとして、とにかく最初から最後まで「困った奴等の物語」でしかないのが最高。こういう音楽があるから、こういう奴等が世界にいてくれるから、弱き者が心を奮い立たせることができるんだよ!
「俺のことを笑えばいいさ/俺は気にしないぜ/だってこれは自由になる為の正当な代償だから」(Sonny「Laugh At Me」)。
スティッフ・リトル・フィンガーズの「Alternative Ulster」が鳴り響く場面は死ぬほど燃えるぜ。テリー・フーリー本人による詳細な解説書が付いているサントラも本当に素晴らしいっす。映画の日本公開が未定なのに、なぜか日本盤も出ているという。映画の最後でテリー・フーリーがいきなり歌い出すことに違和感を覚えた人もいるかもしれないけど、実際に彼は1979年に「Laugh At Me」のカヴァー・シングルを発表しているんすよね(イントロでテリーの大好きなシャングリラスの「Leader Of The Pack」に対するオマージュをカマしている点に注目)。その辺りのことについてはサントラの解説書で詳しく書かれているし、音源自体はグッド・ヴァイブレーションズから発売された音源をまとめたコンピレーション『Good Vibrations: The Punk Singles Collection』で入手が可能(サントラにはインスト・ヴァージョンを収録)。