★★★
ラーズの再結成を経て発表されたジョン・パワーの2ndソロ・アルバム。前作『Happening For Love』はアコースティック・ギターの歯切れ良いコード・ストロークを前面に押し出したロックンロール・アルバムだったが、今作はジョン・パワー流スキッフル・アルバムといった趣き。
スキッフル? そう、ロニー・ドネガンでお馴染みの、あのスキッフルだ。そもそも、ラーズが幾多の60年代懐古趣味なバンドと大きく異なっていたのは、ユー・アム・アイのティム・ロジャースがこちらのインタビューでも明言しているように、60年代の英国ロック・バンドのルーツであったスキッフルのエッセンスが、そのサウンドとリズムに大きく反映されていたところなのだ(そういう意味でコーラルはラーズの正統な後継者といえる)。
だから、2005年の再結成ツアー時にラーズのドラマーがスタンディング・ドラムだったのは、決してリー・メイヴァースの気まぐれなんかではなくて、彼の音楽的な一貫性の証左なのである。今作がスネアとハイハットを全く使用せずに仕上げられているのは、そんなリー・メイヴァースの姿勢が強く影響しているものと思われる。まあ、ラーズの盟友である元ステアーズのエドガー・ジョーンズのソロ・アルバム『Soothing Music For Stray Cats』ほどではないにしても、少しレイドバックし過ぎな点が気にならないでもないが。全10曲31分。日本盤のボーナス・トラックとして収録された3曲の方がアルバム本編よりも良い出来。