『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』を観て気付いたけど、 ニューヨーク・タイムズ紙によるハーヴェイ・ワインスタインの告発記事が出たのが2017年10月、加賀賢三氏が池袋シネマ・ロサの舞台上で松江哲明による性行為強要を告発したのが2017年8月でほぼ同時期だったんすよね。当時の日本で松江哲明を擁護する人間がいかに多かったか、加賀氏による告発を咎める人間がいかに多かったかを思い出すとマジで絶望的な気持ちになりますね。これによって日本の映画業界の人間および映画マニアにいかにヒューマニズムに欠けている人が多いかが露わになった感がある(気持ち悪い発狂映画おじさんの可視化)。映画よりも大切なことが世の中にはいっぱいあるよ!
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ジュニパーの新作『She Steals Candy』収録の「Baby Doll」はエイミー・リグビーのデモ音源集『A One Way Ticket To My Life』に収録されていた楽曲のカヴァー。渋いチョイスだ。エイミー・リグビーはパブ・ロック/パワー・ポップ界の愛されシンガー・ソングライターことレックレス・エリックの奥さんですね(彼等はデュオとして何枚かアルバムをリリースしている)。レックレス・エリックの「Whole Wide World」はライトニング・シーズの初来日公演でも聴けた思い出深い1曲。ちなみに坂井真紀はレックレス・エリックのファンとして有名。
坂井真紀姉さんに以前「STIFFで一番のお気に入りは?」とリプライとばしたら「江戸っ子ならレックレス・エリックでキマリでいっ!」と返事があって興奮したなーw。
— あんこすきの守 (@ankosuki) 2011年10月18日
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カネコアヤノの新作『タオルケットは穏やかな』収録の「眠れない」って、このビートと12弦ギターの使用で分かると思うけど、要するにビートルズの「Ticket To Ride」ですよね。
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ニコール・ホロフセナーの最新作『You Hurt My Feelings』のレビューで、Netflixで独占配信されている『コネチカットにさよならを』が彼女の唯一の失敗作として扱われているー。まあ、確かにその通りではあって、日本だとこれが一番広く見られる状況にあるってのはなかなかにまずい状況だと思う。だからこそ「サム・フリークス Vol.23」で『ウォーキング&トーキング』を上映する意義もあるはずだ。
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『ザット'90sショー』の第1シーズン最終話はマフスの「Kids In America」を大フィーチャー。つまりマフスの「Sad Tomorrow」で始まり「Kids In America」で締め括るシーズンだったわけで、これは完全に意図的な構成だと思う。先日も書いたように、大元の『ザット'70sショー』自体が超パワー・ポップなTVショーだったのだから、その90年代版にマフスが起用されるのは必然。
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Juniper/She Steals Candy
★★★★
マイケル・シェリーの愛娘であるジュニパーの2ndアルバム。前作は現代版レスリー・ゴーアといった趣きのガールズ・ポップで、全曲が彼女の為に書き下ろされた楽曲だったが、今作は全16曲中11曲がカヴァー。
セイルズの「Bang!」やバングルスの「James」、ゴーゴーズの「Turn To You」といった前作の延長線上にあるパワー・ポップ路線の楽曲を取り上げつつ、今作ではデルバート・マクリントン(ジョン・レノンにブルースハープを伝授したアメリカのブルース/カントリー・シンガー)のナンバーを4曲も取り上げていたり、ジョニー・フォーチュンの「Don Stole My Girl」を「Dawn Stole My Guy」と改題してカヴァーしていたりと、シェリー家の音楽的ルーツが垣間見えるような内容。変わり種としてはKISSのジーン・シモンズのソロ曲「See You Tonite」をボサノヴァ調のアレンジでカヴァーしたりもしている。
書き下ろし曲で最も注目すべきは、マフスのキム・シャタックが晩年に書き遺した「Taste The Soup」が収録されていること。前作収録の「Poke Your Eye Out」と共に、キム(とリサ・マー)が2019年夏にジュニパーに託した楽曲はこれで全て完成したわけだ。素直に喜びたいと思う。務めを果たしたジュニパーさんは今年高校を卒業されるとのことです。