即座に消えた方がいい内容をあえてフリートではなくツイートすることで有名な常川拓也さんに、不人気イベントの「サム・フリークス Vol.12」で上映する『ジョージア』と『ミス・ファイヤークラッカー』についてのコラムを書いていただきました! 「サム・フリークス Vol.12」は 5月8日(土)に開催です!
ミスコンは「セクシズムの温床」「白人至上主義者のためのもの」と揶揄される中で、近年、『ダンプリン』や『MISS ミス・フランスになりたい!』あるいは『Miss Juneteenth』『Misbehaviour』など、家父長制の規範に異議申し立てる映画が増えつつある。
ミスコン命な女性を描いた『ビューティフル』を監督したサリー・フィールドは、それが女性が奨学金を得るための手段であり、地方出身の貧しい家庭の子にとっては教育を受ける方法であると認める。ホリー・ハンター演じる赤髪のカーネルが義姉に憧れて地元のミスコンで優勝することを望む『ミス・ファイヤークラッカー』の裏側にもまた、貧困や恵まれなかった過去からの逃避の目的があるだろう。ミシシッピ州出身の劇作家ベス・ヘンリーは、『ロンリー・ハート』『ミス・ファイヤークラッカー』と米国南部を舞台に、家父長制の中で苦しみ、憂鬱な状況に生きる女性たちの物語を綴る。自尊心が低いカーネルは、ミスコン優勝者である義姉を理想と見なすが、その彼女は不幸な結婚生活から抜け出すことができない。「美しさ」で手に入れた幸福は彼女の人生を保証するものではないようである。
劇中、カーネルは米国国歌に合わせて星条旗を模した衣装でタップダンスを披露する。ヘンリーは、美醜の優劣やコンテストの勝敗に関心は示さない。7月4日=独立記念日をミスコン開催日に設定し、幼い頃から他者を参考に自己形成していた女性が「独立」する瞬間を描くのだ。
本イベントの原点であり、4年ぶりの再上映となる『ジョージア』もまた、姉妹間の葛藤を描いた映画である。主演のジェニファー・ジェイソン・リーはしばしば痛みを伴う物語に身を投じる。彼女が共同脚本を手がけた『グリーンバーグ』に「傷ついた者は他者を傷つける」というセリフがあるが、それはJJLが生み出したように思えてならない。彼女は、自己破壊的な行動を取ってしまったり、セルフィッシュで思いがけず人を傷つけてしまう役柄ばかりを演じてきたのではなかったか。故に、製作に携わる『ユニークライフ』で彼女は、「最高の世話人は世話されなかった人だそうよ。私にはぴったりの言葉ね」と発するのであり、その言葉は彼女だからこそ説得力を持って響くのである。
(映画ライター・常川拓也)