ビル・フォーサイスの『グレゴリーズ・ガール』は英国映画協会選出による歴代英国映画ベスト100でも30位にランクインしたほどの名作青春映画ではあるものの、現代の視点からするとどうかと思うような描写も散見されるので、どうやって補完するべきがずっと考えていたんだが、やはりここはビル・フォーサイス自身の『シルビーの帰郷』でリカヴァーしてもらうのが一番良いという結論に至りました。というわけでサム・フリークス Vol.14はビル・フォーサイス特集をやる方向で進めていきたいと思います(会場と上映権の手配はこれから)。
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スリーフォード・モッズの新作『Spare Ribs』収録の「Nudge It」は、彼等がキンクスの系譜に連なるグループであることを証明するナンバーである(「All Day And All Of The Night」。つまり郷ひろみの「花とみつばち」とは親戚のような関係)。実際、ジェイソン・ウィリアムソン自身も最近のインタビューで自分達のソングライティングがキンクスからの伝統に沿ったものであることを認めているし。
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ノルウェーの名パワー・ポップ・バンド、ヤム・ヤムズが去年リリースしたアルバム『For Thos About To Pop』に収録されている「Can I Come Over」って矢沢永吉の「ROCKIN' MY HEART」(パワー・ポップ路線の名曲)みたいっすね。
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子供バンドによる激渋な「Gimme Shelter」。そっちが歌うんかい。「Gimme Shelter」といえば『ベビーシッター・アドベンチャー』と『レポーター・ガール』がとにかく最高で、なぜか子供と相性の良い曲でもある。『レポーター・ガール』のシーズン2楽しみですよね。
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新年会が中止になったので家でウイングスの『ロックショウ』ではない方のライヴ映画として知られる『The Bruce McMouse Show』(iTunesでレンタルできますよ)を観てたんだが、この時期(1972年前後)のウイングスってビートルズの『Let It Be』からの流れであるザ・バンド影響下のアーシーなロックからグラム・ロック的なサウンド(と服装)へと移行しかけている過渡期で、ライヴ映画としてはかなり美味しいとこ取りの感がある。で、そんなロック映画に子供向けのアニメを織り交ぜてしまうところがポール・マッカートニーの「らしさ」だと思う。ステージの模様はTレックスの『ボーン・トゥ・ブギー』風味も。ラストで『Red Rose Speedway』のジャケットを再現しているが、こういうジャケットの映像再現は「Back To The Egg TV Special」でもやってましたな。
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1980年代のニューヨーク・インディーズ派の二大巨頭というとジム・ジャームッシュとジョン・セイルズということになると思うんだが(時代的にこの少し後からスパイク・リーやハル・ハートリーが続く)、ジム・ジャームッシュは「男の映画」が大半なのに対して、ジョン・セイルズはキャリアの初期から「女性映画」を意識的に撮っていたことが彼等の個性の違いとして大きいのではないかと思う。ロザンナ・アークエットの初期の代表作である『ベイビー・イッツ・ユー』は勿論として( スーザン・シーデルマンの『マドンナのスーザンを探して』はここからの流れとして位置付けることができる)、『リアンナ』のようなレズビアン映画を1980年代前半に撮っていたのは本当に凄い。これがあるからアカデミー賞脚本賞にノミネートされた名作『パッション・フィッシュ』があるし、「サム・フリークス Vol.11」で上映する『ゴー・フォー・シスターズ』もこの路線の傑作なのでぜひよろしくお願い致します。
『パッション・フィッシュ』は『「百合映画」完全ガイド』でも紹介されてたけど、マジで名作なんすよねー。