ようやくMUDOLLY RANGERSのPVが届いたー。やはりKamuiは超パンク。『トレインスポッティング』風かつ最後にKamuiのノイバウテンのタトゥーが映るのも最高。ノイバウテンの各アルバムもようやくサブスク配信が始まったのでそっちも併せて聴きたい。
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『ヒステリア/100万ボルトのエクスタシー』を手掛けたターニャ・ウェクスラーの9年ぶりの監督作『Buffaloed』は借金取り達の壮絶なバトルを描いた描いたゾーイ・ドゥイッチ版『ウルフ・オブ・ウォールストリート』。ゾーイ・ドゥイッチの出演作としては『Flower』『ゾンビランド:ダブルタップ』路線のブッ飛んだキャラクターを演じている作品なんだが、本作の製作を彼女自身が手掛けていることからも分かるように、本人的には本当はこういうコメディをやっていきたいんでしょうな。この路線での彼女の凄みを知ってしまうと、やはり『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』や『ダーティ・グランパ』や『ウェディング・バトル アウトな男たち』といった「男のコメディ」ではその魅力がスポイルされていたんだなあと思わざるを得ない。
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元祖「スケーター・ボーイ」として有名な常川拓也さんに、5月23日(土)に渋谷ユーロライブで開催される「はみ出し者映画」のイベント「サム・フリークス Vol.8」についてのコラムを書いていただきました!
ボブ・ディランの来日公演が中止になって「運命のひとひねり(Simple Twist Of Fate)」が生で聴けなくなりましたが、同曲からタイトルを採った映画『パパとマチルダ(原題:A Simple Twist Of Fate)』は上映されます! 億が一の可能性でイベントが中止になった場合は、前売り券の購入者の方には私が責任を持って上映作品のDVDを送付いたします。
現在、松竹ブロードウェイシネマでも上映中の『シラノ・ド・ベルジュラック』をスティーヴ・マーティンが脚色&主演して現代版ロマンティック・コメディに仕立てたのが『愛しのロクサーヌ』。『パパとマチルダ』もこの路線の延長線上で、ジョージ・エリオットの『サイラス・マーナー』をスティーヴ・マーティンが現代劇として脚色&主演した映画です! 彼がバンジョーを弾くシーンもあるよ! しかも劇場初上映! 前売チケットはPeatixで販売中です!
Banjo calm. pic.twitter.com/kAhRbMyfUp
— Steve Martin (@SteveMartinToGo) 2020年3月27日
ショーン・アンダースは、血縁ではない家族を描いた傑作『インスタント・ファミリー』を作る上で、スティーヴ・マーティン主演の『バックマン家の人々』のようなファミリー・ドラマとコメディを織り交ぜて現実社会を表現した作品を目指したと語っていたが、『パパとマチルダ』にも近いことが言えるかもしれない。「Vol.3」で特集した『バッグ・オブ・ハンマーズ』とも連なる主題だが、マーティンが捨てられた孤児を養女として迎える物語である。ラッパーのGADOROが一番苦手なものは「足元を見てくる金持ち」と言っていたが、ここではその子どもの運命が金や弁護士の力で忖度される状況が待ち受けている。安倍晋三や麻生太郎のような人でなしが未だに大手を振っているこの国で、いま『パパとマチルダ』に流れる意志に触れることは有効だろう。
一方、ケベック映画『少女ジュリエット』は、違いについての映画だ。標準とは異なる体型や性的指向、知能などのために周囲から白い目で見られる者たちの物語であり、特に学校という空間はファットシェイミング(肥満を侮辱する言動)やファットフォビア(肥満恐怖症)が顕著に浴びせられる空間として現出している。『なまいきシャルロット』『ゴースト・ワールド』『ウェルカム・ドールハウス』を下敷きとしたような学園映画でありながら、プラスサイズのめげないジュリエットを中心に多様性やフェミニズムを反映させているからこそ、既存のステレオタイプやパラダイムを変革し、思いがけない展開をしていく新鮮な面白さを生み出している。まさに『Booksmart』と同時代的な傑作である。あるいは確かに『エイス・グレード』と近いが、時代よりも思春期の普遍的な感情を捉えようとしているように感じる。ジュリエットの楽観的な見方を表したポップで遊び心ある画面も愉しく、『ブレック・ファストクラブ』オマージュと同時に、クィア讃歌で締めくくるのも最高だ。なお、監督のアンヌ・エモンは半自伝的である本作の謝辞を父親、そしてかつて愛してくれなかったすべての少年たちへ捧げている。
バカばっかだ全く! FUCK OFF AND DIE!
(映画ライター・常川拓也)